このたびの「令和元年台風19号」で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
避難されている皆様、復旧作業に従事されている皆様の安全と、
被災地の一日も早い復旧を心よりお祈り申し上げます。
今回の台風19号は、巨大で強力な台風だったため、非常に広域にわたって被害が発生しました。
昨年の西日本豪雨や、先日の台風15号など、毎年のように各地で起こっており、
いつどこで大災害が発生するかは最早予想がつかなくなってきています。
災害が発生してまず思うことは、「私たちに何が出来るのか?」ということです。
FPという職業人として、被災されたお客様や貴重な時間を割いて
この文章を読んでいただいている方の家庭や家計を守るために
私たちができることは、被災されたお客様のサポートをすることと、
今後災害が起きたときに知っておいていただきたいことをお伝えすることです。
今回は、公的支援と私的支援についてお伝えします。
被災した際の支援制度は、「公的支援」と「私的支援」に分かれます。
文字通り「公的支援」は国や地方公共団体(都道府県・市町村)からの支援、
「私的支援」は公的支援以外の支援です。
まず、被災して何らかの支援を受ける際は「罹災(りさい)証明書・被災証明書」が必要になります。
●罹災証明書・被災証明書
罹災証明書・被災証明書は「災害を受けてしまった」という証明にあたります。
被災者生活再建支援制度の申請や、税の減免、損害保険会社への請求など
様々な手続きなどで必要になる書類です。
被災した際は必ず申請して受け取るようにしてください。
【1】罹災証明書
「住宅」「事務所」など「不動産」の被害状況を証明するものです。
被災者自身で市区町村に罹災証明書を発行の申し出をします。
調査員が被害を受けた現場を調査し、調査結果によって証明書が発行されます。
一般的には調査から発行まで「1週間~1ヶ月が目安」とされていますが、
「実際にはもっと時間がかかっている」います。
これは、大災害では被害件数もかなりの数になるため、
現地調査の順番待ちの時間が長くかかっているためです。
なお、現地調査は被災から20ヶ月をめどに終了となります。
早めに申請を行いましょう!
【2】被災証明書
「家財」「自動車」など、「動産」の被害状況を証明するものです。
被災証明書が発行されると、税金や保険料の免除など
自治体によってさまざまな救済措置を受けることができます。
「被災証明書」は即日発行してくれますので、すぐに受け取ることができます。
【3】申し出にあたって
申請先は各市区町村ですので、市区町村のホームページもしくは役所でもらうことができます。
(申し出に必要なもの)
➀災害の状況が分かる写真(片付ける前の状態)
②本人確認書類(コピー可の場合も)
③印鑑(本人確認書類があれば省略できる場合も)
※この➀~③は災害時に非常に使えるものです。
②本人確認書類のコピーと③認印は防災リュック(非常用持ち出し袋)などに
入れておくことをお勧めいたします。
【公的支援制度】
被災者の公的支援について、下記の内閣府のURLに非常にわかりやすくまとまっております。
http://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/pdf/kakusyuseido_tsuujou.pdf
是非とも保管しておいてくださいませ。
上記と重複しますが、いくつか良く使われるもののポイントのみを取り上げます。
【1】被災者生活再建支援制度
住まいが全壊等の状況になったときは「被災者生活再建支援制度」の支援金が支給されます。
この支援金は「持ち家か賃貸か」は問われません。
支援金は2段階で、住宅の壊れ具合に応じて基礎支援金が、
その後の住宅の再建方法に応じて加算支援金が支給されます。
・全壊(or解体・長期避難)の基礎支援金は100万円
・大規模半壊の基礎支援金は50万円
さらにそれに加えて
・住宅建設・購入する場合は加算支援金が200万円
・補修する場合は100万円
・賃貸(公営以外)に住む場合は50万円
基礎支援金100万円、加算支援金の200万円で最高300万円が受け取ることができます。
なお、支援金を受け取るには、自治体が交付する「罹災証明書」により、
自宅が全壊等または大規模半壊と認定されていることが必要で、「半壊以下は対象外」です。
(※世帯人数が1人の場合は3/4の金額(最大でも225万円)になります。)
基礎支援金は被災から13か月以内、加算支援金は被災から37か月以内に申請が必要です。
【2】災害援護資金
災害で世帯主が負傷したり、住居や家財に一定の損害を受けた世帯に向けた貸付が
「災害援護資金」です。
貸付限度額は350 万円で、世帯主の負傷の程度や住宅等に受けた損害の程度により
貸付額が異なります(150万~350万円)。
償還期間は10 年以内(据置期間原則3年(5年も可能)以内)、
据置期間終了後の貸付利率は年3%ですが、連帯保証人を建てられる場合は無利子になります。
貸付を受けられるかどうかは家族構成による所得制限(被災の前年の所得による)がありますので注意が必要です。
また、金融機関からの借り入れが難しい世帯向けには「生活福祉資金制度」があります。
【3】災害弔慰金・災害障害見舞金
災害によってご家族が亡くなった場合、遺族に「災害弔慰金」が支給されます。
支給額は生計維持者の死亡は500万円、その他の人は250万円です。
死亡に至らなくても、災害により心身に重度障害が生じた場合には「災害障害見舞金」が支給されます。
支給額は重度障害について生計維持者は250万円、その他の人は125万円です。
【銀行・信用金庫(私的支援)】
【1】通帳・キャッシュカードの紛失
東日本大震災の際はキャッシュカードや通帳を紛失しても
本人確認書類のコピーや拇印でお金を引き出すことができました。
今回の台風19号でも多くの銀行は本人確認書類のみで
キャッシュカードの再発行を無料で受け付けています。
各種金融機関によって違いますが、杓子定規な対応ではなく
個別の事情を勘案した柔軟な対応をしてくれるようです。
【2】現金の焼失・破損
現金が燃えてしまった、破れてしまったなどの場合も
日本銀行や金融機関に持ち込むことで新しいお金に交換してくることがあります。
➀紙幣の場合
・2/3以上の面積が残っている場合…全額換金(1万円→1万円)
・2/5以上~2/3未満…半額換金(1万円→5千円)
・2/5未満…換金不可(1万円→0円)
②硬貨の場合
・硬貨であると確認できれば交換可能
焼けてしまった紙幣や溶けてしまった硬貨も
お金だと判別することができれば換金の可能性はあります。
箱などに入れるようにして出来るだけ原型を崩さずに持参ください。
【3】二重ローンにならないために
被災により、住宅ローンの支払いの支払義務が免除になることはありません。
火災保険(自身の場合は地震保険)に入っていれば保険金で支払義務を無くすことはできるかもしれませんが、
ローンが多く残ってしまっている場合は、保険金の大半がローンの返済に充てられて、
住宅を建てる時の金額が不足してしまうこともございます。
罹災証明書があれば、ローンを延滞しても延滞扱いにならない措置が取られていますが、
抜本的な問題解決になりません。
実際、ローンの減免措置が認められるケースはほとんどなく、
多数の人が「二重ローン」や「災害ローン」などを抱えてしまいます。
★★重要★★「被災ローン減免制度」を活用しましょう!!
【1】生活再建を考えた制度
全国銀行協会や弁護士が作ったものが
「自然災害債務整理ガイドライン」(通称「被災ローン減免制度」)です。
http://www.dgl.or.jp/flow/
この組織が作られたのは、先程の住宅ローンを抱えた方が被災した時に
あまりにも家がないのにローンだけ残ってしまった方が多かったためです。
対象となるローンは住宅ローンだけではございません。
リフォームローンやクレジット債務、自動車ローン、
事業性ローン(ただし個人事業主のみ)も含まれます。
まず、メインバンクに被災ローン減免制度による債務整理を申し出、
銀行に手続きの着手に関する同意をもらいます。
次に、弁護士会に「登録支援専門家弁護士」の委嘱を申請。委嘱を受けた弁護士は
債務者と話し合って調停案を策定します。全債権者の同意が得られれば
簡易裁判所に「特定調停」という手続きを申し立て、調停条項を確定させます。
あとは債務者が調停条項で減額された債務を支払うことになります。
なお、この制度で支援を受けた場合、
弁護士の費用は債務者が負担する必要がなく、申し立ての手数料も無料です。
【2】現金が残り、信用情報にも載らない
最も大きなメリットは「手元に財産を多く残せること」です。
この制度では残せる金額が500万円(+公的支援)と格段に増えるのです。
(通常の自己破産は手元に残せる現金は99万円)
具体的にどれだけ減免されるのか、例で検討してみましょう。
ローン残高:▲2000万円
資産・収入:1250万円
(内訳)
土地売却代金500万円
現預金600万円
被災者生活再建支援金100万円
義援金50万円
この状態で制度支援を使わなかった場合、
▲2000万円と1250万円を相殺して▲750万円となってしまいます。
ですがこの制度を使うと
土地売却代金500万円と、現預金のうち500万円を超える100万円の計600万円を
ローンの返済に充て、
【残り1400万円の債務返済の免除を受けること】ができます。
現預金500万円と支援金100万円、義援金50万円の計650万円を手元に残すことができ、
これを元手に生活の再建をすることができます。
制度を使わないと▲750万円、制度を使うと+650万円。
知っているか知らないかで1400万円の差が付きます。
さらには法的整理と違って、私的整理(任意整理)ですので個人信用情報にも載りません。
申請要件としては
・被災後にローンの支払いが困難になることが確実であること
・被災前にローン返済に問題がないこと
・被災前年の年収730万円未満
・ローンの返済額と、新たに借りる家の家賃などの負担の総額が年収の40%以上
私たちFPの役割は被災により理不尽にも貧困に陥らないようにサポートをすることです。
今回ご紹介した以外にも、
被災により最長3年間税金(所得税・住民税)が減額になる制度や、
農業・林業・漁業従事者のための融資制度、
被災した会社経営者のための助成金や融資制度など様々なものがございます。
制度は変わることも多々ございますが身近な方が被災してしまったら私たちにご連絡くださいませ。
災害時、私たちFPにできることは限られていると思いますが、
私たちの知識を伝えることで、知ることで助かる命もあると信じています。
これからも私たちは引き続き自分たちの最も得意なことで
一人一人のご相談者の生活の支援を続けていきたいと思います。